2024-12-01から1ヶ月間の記事一覧
ボヘミアは海辺にある インゲボルク・バッハマン この地の家が緑ならば、家の中へと入っていこう 橋が健在ならば、確固とした足場を行こう 愛の苦悩が時の流れの中に失われるならば喜んで失おう それが私のことではなかったとしても、私のような誰かのことだ…
私の鳥 インゲボルク・バッハマン 何が起ころうとも。荒れ果てた世界が たそがれに沈む 森は世界を眠らせ 見張りのいない塔から 悠然と世界を見下ろす梟の眼 何が起ころうとも。お前は自分の出るべき時を知っている 私の鳥。面をかぶり 霧を抜けて私の元に来…
世界というわたしの戯曲 トーマス・ベルンハルト 何千回見ても同じ眺め 窓越しに見る、世界というわたしの戯曲 林檎の木は色褪せた葉をしげらせ 幾千もの花を咲かせている 空にもたれかかって 雲の帯がながく伸びる…… 子供たちの午後の叫びが響く まるで世界…
遊びはおしまい インゲボルク・バッハマン ねぇお兄ちゃん、一体いつになったら筏を組み、 空を下るの? ねぇお兄ちゃん、そのうち荷物の重さに耐えられなくなって きっと墜落する ねぇお兄ちゃん、画用紙にいくつもの 国や線路を描こう 気をつけて。この黒…
エニグマ インゲボルク・バッハマン もうなにも来ない 春はもう来ない 千年カレンダーによればそうらしい 夏ももう来ない。「夏らしい」というような 気持ちいい言葉で呼ばれるものすらも―― もうなにひとつ来ないのだ 泣くことはないと 音楽がささやく ほか…